【書評BLOG】「なぜヒトだけが幸せになれないのか」
- tp278442
- 7月22日
- 読了時間: 2分
更新日:7月29日
小林 武彦 (講談社現代新書 2771)
生物学者による哲学の新書。
小難しい哲学者の本より、余程役に立つというのが読後感。
その主張は人類種は幸せは実感しづらい構造になっているので、幸せを感じれないことをネガティブに捉えることはない!
なーんだ人生がうまくいってなくても、クヨクヨしなくてええやん。
この本を勧めたいのは今「幸せ」や「自信」を感じられていない人。 いま幸せに包まれている人は、「だからどうした」な内容かもしれない。
科学的厳密性は95%くらいだと思うが、100%を目指すと難解な文章になるに違いない。
エッセー風なぶん読み易く、執筆内容を自分がどう生かすか考えながら読む余裕の持てる本。
自分は軍学者として有名な兵頭二十八氏の著書を全作品読んでいる。
兵頭は「権力とは『飢餓と不慮死の可能性からの遠さ』」というテーゼを元に論を組み立てているので、小林 武彦が幸せの定義を「死との距離が保てている状態」としていたののはストンに腑に落ちた。
自分は鬱脱出期に読んだので、自分の不安を相対化するのに有効だったし、今後の方向性についても明確な指針を指し示してくれた。
若さが失われていくことに悩んでいる方は、小林の別著「なぜヒトだけが老いるのか」も良い。
「え? 動物だって老いるでしょ?」と思われた方、確かに野生動物にも老いがあります。でも野生での老いは死とイコールです。弱肉強食、ほとんどの場合、老いれば死にます。「老後」という期間がほぼ存在しないのです。ヒトに飼われ、野生ではないペットのイヌやネコには老いても生き続けるので老後がありますが、野生動物は「ちょっと最近遠くの獲物が見えにくくなってさ〜。年とるとイヤねぇ」と思うことはないのです。
例外はヒト、そしてシャチやマッコウクジラなど一部の動物だけ。それ以外は生殖年齢を過ぎると、コロリと死んでしまうのが常なのだそうな。知らなかった。
そこから話は人類種にとっての「老い」のポジティブな価値に展開していく。説教じみておらず説得力がある。
正直、自分は70過ぎたら後の人生は、きっと苦しいばかりでさっさと安楽死できればなんて思っていた。
ポジティブな「老い方」が存在するのなんて話は今まで聞いた事がなかったので、非常に勇気づけられた。
自分は読書開始前に、YOUTUBEで作者の風貌と語り口を確認してから、読み始めるのを習慣にしている。小林武彦氏の場合この動画が面白い。
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