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【書評BLOG】「徴兵体験 百人百話」

  • tp278442
  • 7月22日
  • 読了時間: 2分

更新日:7月29日

徴兵体験 百人百話」阪野吉平 (著) 17出版

 

文中に登場する人物は既に全員死んでいる。 20年前に行われた山形県の110人の徴兵体験者へのインタビュー集。

 

「戦争、軍隊は地獄だった」というエピソードばかりでないのがいい。

「軍隊は娑婆と比べて天国だ」

「軍隊で初めて村の外の世界を見た」

「徴兵検査で甲種合格しないと一人前の男ではないと思っていた」

などなど、千差万別の感想が1人2000文字で記録されている。

話者の現在(80歳以上)と、若かりし頃の軍人写真が掲載されているのもエモい。 ちなみに戦前日本の徴兵制度は男子であれば誰でも軍隊に取られるというイメージを持ってる人が多いが、そんなことはない。 20歳で軍隊入りするのは「高身長」「横幅しっかり」「内臓に病気なし」「視力良好」な上位2割の男子。 男なら誰でも軍隊生活を暮す必要があるのは、現在の韓国かイスラエルぐらいだ。 身体の弱い兵隊を徴兵する事は必ずしも強い軍隊を強い国家を維持する上では必ずしもプラスとはいえない。

 

百人の談話を通じ浮かぶ上がるのは思ったほど、戦争への嫌悪の証言が多くないこと。 生存者バイアスはあると思う(登場人物全員、80歳を越えてピンピンということは、若い時はもっと頑健で、運が良かったことを意味してる。死人に口はない)

 

自分は最近、他人に対し「●●は間違っている」「●●すべきじゃないか」と説得することを諦めようと考えている。 人間は余りに違っていて、誰もに納得して貰うロジックなんかない。 自分の思想の確立を放棄することにためらいがあったけど、その方向に勇気を与えてくれる内容だった。

 

自分は徴兵されたら、気が狂うか、心が病むかしそうで、何十年経ってもPTSDに苦しみそうだけど、人類種というものは人によって、生育環境によって、こんなにもものの感じ方が違うのだということを思い知らされた。

軍隊にポジティブな記憶を持っている登場人物を、「不幸な時代の可哀そうな人」「洗脳が抜けていない人」とは思えなかった。

 

「モノの感じ方」が人によってここまで大きく違うのであれば、「誰にでもあてはまる正義」を掲げて人を説得する事は無理なのではないか。人民は目覚めない。

政治とは自分と同じ感覚の人を集める「圧力団体」形成以上にはなりえないという限界を感じる。

 → 運動はできても、世界を変える革命ができるとは思えない。

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